芸術とは一体何でしょうか。
なぜ人は芸術に感動するのでしょうか?
右脳左脳のそれぞれの役割とは?
今回は脳から見る芸術のお話です。
全体を見れるかどうか
私は芸術の1つの要素は「全体を見ること」だと考えています。
全体を見るとはどういうことでしょう。
「見る」というよりは「感じる」といったところでしょうか。
「見ているようで見ていない」ような、見ているような。
目や耳で認識するというよりは、全身で感じる部分が芸術にはあるんじゃないかなと思います。
その鍵は「右脳」が握っているのではないでしょうか。
右脳と左脳
脳に関しては研究が進んでいるとはいえ、まだまだ分からない事が多いのも事実です。
それを踏まえての考察だということをご了承ください。
一般的に「右脳は感覚脳」「左脳は理論脳」というような表現がされます。
これはどちらの脳が優れているという訳ではなく、どちらも重要で相互に関係しながらバランスを取っています。
右脳と左脳の特徴をいくつか挙げてみましょう。
右脳の特徴
右脳の特徴は
・全体性(境目がない)
・現在しかない
・映像(イメージ)で捉える
右脳には境目を認識する能力はありません。「自分」や「相手」を認識できないのです。全て繋がっています。
右脳が優位になると、「今、全体が境目なく繋がっていることを感じて気持ちよくなる」ことが出来るそうです。
生物の根源的な喜びの「生きる喜び」のようなものを感じる事が出来ます。
そういった経験はあるでしょうか?
音楽を聞いている時に、全てが一体に感じて心地良くなったりすることはないですか?
煩わしい悩みなどは忘れて、幸せな気分にならないでしょうか。私はあります。
右脳には人間が芸術を愛してやまない秘密があるようです。
左脳の特徴
左脳の特徴は
・自己の認識(境目を作る)
・系統的(過去と未来)
・言語で考える
左脳によって人間は「自分」を認識できます。
外界との境目を作り、過去から学び未来に活かします。
これは生き抜く上でとても大切なことです。
特に「人間社会」では大切なことと言えるでしょう。
しかし、左脳が優位になりすぎると、「自分のことばかり」考えたり、「過去や未来」のことばかり考えたりするのです。
それは時として、私たちの精神を蝕みます。
社会を生き抜くためには必要なことでも、生きる喜びとは相反する面もあるようです。
現代人は左脳が優位になりすぎていると言われています。
文明はどんどん発達しているのに、生きる喜びはどこかに忘れてきたかのようです。
文字ではなく絵として捉える
例え話をします。
「文字を文字としてではなく絵として捉えた時に感動が湧いてきた」
これは私がテレビで空海の書(雑体書)を見た時のことです。
その書は巻物に長々と文字が書いてあったのですが、私にはそれが一つの「絵」として見えたのです。
とても美しい一つの絵に見えました。
一つ一つの文字を拡大してみれば、たしかに「文字」なのですが、全体をみた時に「絵」として捉えたのです。
(「雑体書」を画像検索してみてください。)
文字一つ一つが調和して全体を形作っている。
私は「これこそが芸術だ」と直感的に感じて感動しました。
文字がそれぞれ独立しているが、全体のなかの一つのパーツとしての意味も担っており、全てが調和している。「全てに意味がある」この状態を私は「美しい」と感じたのです。
私たちは綺麗な文字を見た時には「絵」として右脳で捉え、「美しい」と感じているのかもしれません。
なぜ人はそれを美しいと感じるのか
私は常々、「なぜ人はそれを良いと思うのか」を考えています。
ドラムテクニック的に上手くてもイマイチな演奏をする人もいます。
逆に技術がなくても、人の心を打つ演奏をする人もいます。
その要因の1つは、「全体が調和しているか」だと考えています。
一つ一つの音がどれだけ正確にきちんと叩かれていても、それが全体として見たときに調和していなければ美しいと感じることはできません。
もう一度文字で例えてみましょう。
下記はそれぞれの文字は綺麗だが調和が取れていない状態を極端に表してみました。
・今日はドラムをたくさん練習するつもりで来ました。
では漢字だけを大きくして、少し調和させてみましょう。
・今日はドラムをたくさん練習するつもりで来ました。
いかがでしょうか?「下の方がよく見えるのは当たり前じゃないか」と思われましたか?
ですがこの当たり前のことがドラムで出来てない人が多いのです。
上のガタガタの文章みたいな演奏をしている人が意外と多いのです。
調和を意識する
「一つ一つの音が全体を見た時にどんな意味を持つのか」今出している音にはどんな意味があるかを意識してみてください。
全体を見ることが出来れば、美しさを理解できる(感じる)ようになってきます。
これは音の関係性のところでも話したことと通じます。
(音の関係性の話はこちら→『[必ず知っておこう] 音の関係性が意味を作る』)
これを意識するだけでも、演奏はガラッと変わってきます。
また曲を聴く時にも、全体を見る癖をつけてください。
「この音は全体から見てどんな意味を持つか」を探りながら聞いてみてください。
この全体を見る能力、空間を把握する能力は右脳の分野です。
左脳だけで論理的(機械的)にドラムを叩いていた人は、右脳も同時に使えるようになってくるとさらに成長することができます。
ドラムは手足を有機的に動かすので、左脳の能力が多く影響する楽器です。ですので、もちろん左脳も大変重要です。
ゆえに右脳の全体を感じる能力がないがしろにされがちです。
ぜひ、全体を捉える力を身につけてください。
右脳に歩みよるのです。
最後に、動画を紹介します。
左脳に脳梗塞を起こした脳科学者の経験を聞ける動画です。
左脳が働かなくなることで、どんなことが起きていったかを体験した彼女の話はとても興味深いものです。
ぜひご覧ください。
>>次のドラム講座➡︎『[必ず知っておこう] 音の関係性が意味を作る』
>>知らなかったじゃ済まされない!?「目から鱗のドラム講座一覧」はこちら➡︎『ドラム講座一覧』