関係性によって意味をなす
音というのはそれ単独では意味が生まれません。
他の音との関係性で意味が生まれてくるのです。例えばスネアを一発叩いてみてください。
その音は大きな音ですか?小さな音ですか?
もし、周りが静かな環境でしたらその音は「大きな音」になるでしょう。
周りがうるさい環境でしたら「小さな音」となります。
つまり音とは「絶対的」なものではなく「相対的」なものと言えるのです。
関係性を意識して演奏する
その音単独では意味を持たないとなると、演奏する時はどんなことを意識しておくべきでしょうか?
「どんな音を出すか」ではなく「どんな関係性を持たせるか」が大事になってくるのではないでしょうか。
ハイハット、スネア、バスドラムがそれぞれどんなタイミングでどんな音量で演奏されているかによって、意味が出てくるのです。
ドラムでメロディを奏でることは難しいですが、メロディはまさに関係性によって生み出されますよね。
それでは関係性を作る要因には他に何があるのかを見ていきましょう。
音の関係性を作る種類
関係性を作る素因としては
・ハーモニー
・リズム
・ダイナミクス
・リピート
等が挙げられます。1つずつ見ていきましょう。
メロディの関係性
例えば「シ」の音を弾いてみてください。
「シ」の音単独ではそこに意味を見出すのは難しいです。
では「シ」に続いて一つ上の「ド」を弾いてみてください。
「シ〜ド〜」という感じです。いかがでしょうか。少し悲しい感じがしないでしょうか。
「シ」と「ド」それぞれでは意味を感じないのに、続けて弾くと悲しい雰囲気になります。
これが関係性です。
「ド」が「シ」を悲しく響かせているのです。
さらに「ド」を「シ」よりも弱く弾いてみてください。
さらに悲しさが増したと思います。切なさなども感じることができます。
このように、音と音の高さの関係性によって意味が出来上がっていくのです。
ハーモニーの関係性
ハーモニーとは「音と音の重なり」です。
2つ以上の音が重なることで生まれる響きがハーモニーです。
試しに「ド」と「ド#」を一緒に弾いてみてください。
これは不協和音でとても嫌な響きです。
では次に「ド」の音を一オクターブ上げて一緒に弾いてみてください。
今度は美しい音になりましたね。
同じ「ド」でも一オクターブ上げると関係性ではこのように変化します。
響きの意味は状況や見方によって変化するのです。
ドラムで言えば、クラッシュシンバルとスネアとバスドラムの3つを一緒に叩いてみてください。
汚い音になってしまいます。
しかし、状況によってはこの汚い音が有効になることもあるのです。
例えば、静かな場面で突如この音を出せば、意外性を演出できます。
一見よくないものでも、関係性によって良いものとなる場合があるのです。
リズムの関係性
リズムは今の音と次の音がどういったタイミングで鳴るかで決まってきます。
つまり、「音と音の間のスペース」が重要となります。
リズムとはスペースです。
スペースとは何もない部分ではありますが、何かを感じる事が出来るものです。
また、一つ一つの音の細かいスペースだけでなく、もっと大きなスペースを感じることでも関係性が生まれてきます。
大きなスペースは「円」のイメージです。ある点からスタートして、またある点に帰ってきます。
1小節ごとに円を感じたり、2小節ごとの大きな円だったり、4分音符ごとの小さな円だったり色々な「円」を感じる事が出来ます。
その円の大きさによって、色々な意味(グルーブ)が生まれます。
例えば、ファンクであれば「オン・ザ・ワン」というリズムが重視されます。
小節の「ワン」の所を感じて、そこに帰っていくようにすれば後は自由でいいというような感覚です。
どこからスタートしてどんな大きさの「円」をいくつ感じるかがリズムを生み出す関係性にとって大切なことなのです。
(ちょっと難しかったかもしれません。リズムに関してはまた解説します。)
ダイナミクスの関係性
ダイナミクスとは音の大小のことです。
音の大きさというのは、とても大きな意味を生み出します。
音の三大要素は「高さ」「大きさ」「音色」です。
(音楽の三大要素は「メロディ」「ハーモニー」「リズム」です。)
前の音より「大きい」か「小さい」かで大きな影響を生み出します。
急に大きな音が出るから「驚く」のです。
ずっと大きな音が出ていても「うるさい」だけです。
大声で話していた人が急に小声になったら、「何か大事なことを言うのかな」と感じます。
音の大小(ダイナミクス)をコントロールすることで、意味が生まれるのです。
ダイナミクスはCDなどの音源にすると、一番失われる要素でもあります。
音の粒は揃えたほうが綺麗に聞こえるからです。
しかし、音が綺麗になる代わりに「意味」が犠牲にもなってしまいます。
ダイナミクスは生演奏で聴くと、とても良く伝わってきます。
それが生の音楽を聞いた時に、より感情を揺さぶられる要因の1つなのです。
音の大小は少しオーバーかなと思えるぐらいにすると、ちょうど良いでしょう。
リピートの関係性
音楽は繰り返しの芸術と言われています。
ある特定のリズムを繰り返すことで、グルーブが生まれてくるのです。
繰り返しが起きずに常にリズムやメロディが変化していけば、聞いている方は音楽的なものを感じることはできません。
あるフレーズが鳴った時に、聞いている人は「リピートされること」を期待します。
この期待は無意識に起こることです。
作曲者は「その期待」を利用して、「期待通りにして心地良くなってもらったり」「期待を裏切って刺激を与えたり」できるのです。
リピートすることによって、聞き手は美しさを感じます。
持って生まれたDNAがそう感じさせるのでしょう。
これもつまりは関係性によって成立しているのです。
↓繰り返しのない実験的な音楽の映像です。非常に面白い考察です。(日本語字幕を選択できます。)
主人公と脇役
ドラマや映画などには「主人公」と「脇役」がいます。
どちらも存在してることで、物語が面白くなってきます。
全員「主人公」でも、全員「脇役」でも面白くありません。
音も同じです。
音にも「主人公と脇役」を作ってください。
「主人公である音」を活かすための「脇役の音」が重要です。
「核の音」とそれを「装飾する音」を作ることで、より深みのある意味が生まれてきます。
まとめ
音の意味は関係性によって生み出されます。
・メロディ
・ハーモニー
・リズム
・ダイナミクス
・リピート
これらを意識してドラムを演奏すると、意味のある音になってくるでしょう。
また、関係性はドラムだけの話ではありません。他の楽器との関係性も重要です。つまりアンサンブルです。
そして、音楽以外でも同じです。この世のありとあらゆることが関係性によって意味が生まれています。関係性を意識することはとても大事なことなのです。
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