photo credit: Peru Nazca Lines via photopin (license)

ドラムの考え方

あなたのドラムは「セリフの棒読み」になっていませんか?

あなたはドラムを叩くときに、何を意識しているでしょうか?
「どの太鼓をどのタイミングで叩くか」「どれくらいの音量で叩くか」「どういったグルーブで叩くか」等々、これらはもちろん大事なことですが、それを「なぜそうするか?」を考えたことはあるでしょうか。

「なぜこのタイミングでバスドラムを踏むんだろう」「なぜここでハイハットをオープンするんだろう」。
「譜面に書いてあるからそうする」のではなく、「なぜこうする必要があるか」を考えないといけません。

今回はその「なぜ?」の答えを導き出すための考え方について説明していきます。

音の意味とは?譜面から音楽を奏でるだけではダメ

ドラムを始めた当初は譜面通りのフレーズを叩くことで精一杯だと思います。
しかし、ある程度上達した段階で次のステージに入る必要があります。
それは、「なぜこういったフレーズになったのだろう」ということです。

あなたはすでに作られたリズムを譜面通り叩くだけになっていませんか?
「これはロックエイトビート」「これはブルース」など、「こうだからこう」みたいな感覚でドラムを学んでいませんか?
「複雑なフレーズを叩けるようになる」ことだけが上達していくことだと思っていませんか?

しかし、それは数学の公式をただ覚えて問題を解いていってるのと変わりません。
理屈は分からないが、この公式を当てはめれば問題は解ける」という感じです。

学校のテストではそれでも良いでしょうが、音楽でそれをやってしまってはダメなのです。
ロックの音楽にはロックリズムの公式を当てはめる」ではダメなのです。

そうならない為には、視点を変えて「このリズムを生み出した人達は、なぜこのようなフレーズにしたのだろう?」という想像力を働かせなければいけないのです。
その答えを導き出すには、音楽から受ける感情がヒントになります。
「ロックの衝動や怒りを表現するため」だったり「ブルースの想い」などを表現するために、当時の人たちはあのようなリズムを作りあげていったのではないでしょうか。

そういった感情を表現する為、聞き手に伝える為に「結果」そのようなフレーズになったのです。
ルーツから想像することで、音の意味が見出せるようになってきます。
私たちは譜面という「結果だけを見るのではなく、そのフレーズの「理由から探っていく必要があります。

これは「お芝居」とも一緒です。
役者が台本通りセリフを棒読みで言っても何も伝わってきません。
しかし、その登場人物を理解してなりきって、登場人物の感情を込めて言うからこそ「セリフ」になるのです。

私たちドラマーも「棒読みのセリフ」を読まないように気をつけましょう。
その音楽から受ける感情を音に乗せるのです。

感情

俯瞰の考え方を取り入れよう

アップルの創業者スティーブ・ジョブズのスピーチで有名なものがあります。
「今やっていることは点であっても将来からみるとそれらは繋がって線となる。」
つまり現時点では今やってることの意味が分からなくても、後から思い返してみると意味を見いだせるということです。

音楽においてはどうでしょう。今出している音はどんな意味を持っているでしょうか?
曲全体を見た時に、その音にどんな意味を持たせたいでしょうか?
悲しさ、楽しさ、激しさ、安定等。

これは曲を俯瞰(フカン:離れて全体を見る)して見ないと分からないのです。
部分だけに集中しても意味は生み出せません。
自分で出す音がどんな意味を作りあげるか
部分と全体をリンクさせて感じてください。
自分で分かっていないと聞いてる人は分かりません。

俯瞰

リズムも俯瞰して作る

リズムは一人称視点で考えると感じづらいものです
そんな時は俯瞰してリズムを感じます。
例えば、100m競争で考えてみましょう。
走ってる自分の目線でレーンを見ても距離感はつかみづらいですが、上からドローン等で撮影すると全体が見え、今自分がどこにいて何をすべきかが分かってくるのです。

リズムにおいても上から全体を見ることでパルスを均等にすることができるのです

しかし、リズムを俯瞰して見るとはどうやるのでしょうか。
これは簡単なことではないですが、まずは「目の前のリズムにはまり込まないで全体を見る意識」を持ってみてください。
人間には自分の体がどうなっているかを感じることができる「固有感覚」というものがあります。
この「固有感覚」のおかげで、「今自分の手がどの辺にある」というのが目で見なくても分かるのです。

実はこの「固有感覚」は体だけではなく範囲を広げることができます。
例えば、ドラムスティックを持ったり車を運転したりすると、ドラムスティックや車も体の一部のように感じる事ができるのです。

また、実際には触れてなくても感じる事もできます。
一流のサッカー選手にはフィールドの状況を瞬時に把握する能力があるそうです。
これも一種の固有感覚です。
同じようにリズムの感覚を全体から見る事は可能です。

しかし、固有感覚は何度も繰り返して鍛えなければ育っていきません
ですので、「リズムを全体から見る」意識を持って演奏する練習を何度も行ってください。
そうすれば徐々にリズムを全体から見ることが出来るようになってくるでしょう。

目の前のリズムにハマってしまうと、どうしても焦って早くなりがちです。
落ち着いて焦らずに音楽全体を感じれば自然と自分にとっての正解のリズムが作れるようになるはずです。

俯瞰

関係性で意味が決まる

もう一つ、音の意味を作るポイントを説明しておきます。
それは「音の関係性」です。
例えば、音をたった一つ鳴らしてみてください。そこに意味を感じないかと思います。
しかし、その後にいくつかの音が鳴ると、その音に意味が出来てきます。

たとえば、4分音符をフラットに鳴らす(「ド、、ド、、ド、、ド、、」)とそこで感じるのは安定感ですが、そこに3連符の裏を足す(「ドッド,ドッド,ドッド,ドッド,」)とプッシュ感が生まれ、加速していくような感じや躍動感を感じるのです。

音は関係性で意味が生まれてくるのです。

それは人間でも同じことです。
一人で存在していれば「ただの人間」です。
しかし、親といれば「子供」になり、奥さんといれば「夫」になり、子供といれば「父」になるのです。
他のと関係で何かが生まれてくるのです。

音の関係性にはリズムの関係性だったり強弱の関係性高低の関係性がありますが、これらをコントロールすることで意味を作ることができます。
ドラムの音の関係性を学ぶには「名演を注意して聞く」ことが勉強になります。
いい演奏を聴いた時に「今受けている感情は、どういった要因で生まれるんだろう。」と分析してみるのです。

言葉と一緒で非常に繊細な音色の違いで、人が受ける印象は変わってきます
言葉でもオーバーすぎたらワザとらしかったり、大根役者だったりするはずです。
抑揚がなければ感情がこもっていない印象を持つでしょう。

ドラムにはドラムの表現方法があるのでそれを学ばなければいけません。
例えばトーンは世界共通です。相手の言葉が分からなくても、怒っているのか悲しんでいるのか分かります。
犬や猫でもトーンでどう思っているか分かるのですから、DNAに組み込まれた仕組みと言えるでしょう。
ちょっとした音の大きさの違いや、叩き方で様々な感情を表現することができます。

音を聞く時に一番いいのは、生で聴くことです。
それも小さめの会場で聴くと良く分かります。
CDなどで聴くよりもダイナミクスが大きく、表現力の凄さに驚くことでしょう。

素晴らしいドラマーの音をしっかり聞くにはジャズがオススメです。
ロック系だと一流ドラマーが来ても会場が大きすぎて、細かな表現まで聞くことが出来ません。
しかし、ジャズだと有名ドラマーの演奏を小さな会場で間近で聴けるチャンスがあります。
ぜひ、間近で一流ドラマーの演奏を聴いてみてください。
きっと驚かれることでしょう。

関係性によって意味が生まれることを意識して、音楽を聴いてみましょう。
音楽を聴いて感情を生まれた時は、どんな音の関係性でその感情が生まれたかを探ってみてください。

音の関係性についてはこちらでより詳しく解説しています→『[必ず知っておこう] 音の関係性が意味を作る』

猫

まとめ

音の意味を見出すことはとても大事なことです。

・フレーズをルーツから考える。
・感情を理解する。
・俯瞰する。
・関係性を意識する。

これらのことがとても大事になってきます。
最後に動画を2本紹介します。
1本目の動画では感情や関係性や全体を意識することの大切さが分かります。学ぶべきことが多い動画です。
2本目は世界最高峰ドラマーのブライアン・ブレイドの演奏です。感情を伝えるための繊細なタッチの使い方を聞いてみてください。(ヘッドホン推奨)


>>次のドラム講座➡︎『叩き方を覚えるのでなく、表現したい音楽があるかが大事』

>>知らなかったじゃ済まされない!?「目から鱗のドラム講座一覧」はこちら➡︎『ドラム講座一覧』

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

スポンサーリンク

-ドラムの考え方
-